時の家畜no.1
クローン牛誕生
 *畜産におけるクローン* 
クローンという言葉は一般的には、生物学の用語で「無性的な生殖により生じた遣伝型を全く同じくする生物集団」を意味します。しかし畜産分野では、交配によって自然に生産される一卵性双子や受精卵を2分割して生産される一卵性双子もクローンとして扱っています。
イラスト
 家畜分野で人為的にクローンを生産する方法には、受精卵を分割する技術の他に核移植技術があります。
イラスト 発生初期段階(16〜32細胞期)にある受精卵の卵細胞(ドナー細胞)は、ひとつひとつが同一の遣伝情報を持っています。ですから、この卵細胞をひとつずつ分離して、これを予め核を除去した未受精卵子(レシピエント細胞)に移植してやれば、遺伝的に同一の形質を有する受精卵(再構築胚)をいくつも作ることができます。あとはこれを借り腹牛(受卵牛)に移植すればクローンを作ることができるのです。
 これら技術が実用化されると、さまざまな利用法が考えられます。イラストまず、優良雌牛から採取された受精卵を(多数)複製できる技術としての利用法。また、肉用牛には息牛の肥育成績によって種雄牛の能力を判定する「後代検定」がありますが、これにもクローン技術が応用でき、クローンの1頭を種雄牛とし、残りのクローンを肥育することでその種雄牛の肉用牛としての遺伝的能力を判定できる「クローン検定」という手法が可能となります。この方法は、従来の手法に比べると改良速度が大幅にスピードアップしますし、種雄牛の能力を高い精度で調べることができます。この他にも、クローン牛を肥育試験などの飼養試験の実験材料牛として利用することにより、飼養試験の精度が向上し、肥育技術等の飼養技術を改善することもできます。
 最近では、上記の方法に加え新しいクローン作出方法が開発され、話題を集めています。体細胞クローンです。
 従来、分化した細胞(体細胞)をドナー細胞とした核移植によるクローンの生産は困難と考えられてきました。しかし、昨年2月の英国ロスリン研究所における緬羊の成功や、今年7月のわが国における牛の成功例が報告され、体細胞を用いたクローンがにわかに注目されはじめたのです(詳細は体細胞クローンの項を参照)。

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