豚とは大昔から友だちだった

世界の養豚

農業的性格

 豚という家畜は、ダイズ粕や糠(ぬか)などの農業副産物を資源として利用し、ふん尿を土地へ肥料として還元するという農業的性格と、栄養価の高いエサを効率的に食肉へ転換する工業的性格を持っている肉用家畜です。
 農業的性格は、先祖のイノシシの備えていた広食性(なんでもよく食べる性質)によるもので、人間の利用できない資源を利用して食料生産するという重要な意味があります。例えば、「モンタネラ」というスペイン独特の放牧養豚では、スペイン南部にある広大なコルク樫(かし)の森で秋になると沢山実るドングリを飼料資源として利用しています。また、中国では縁餌(りょくじ:草をエサとして与える)による養豚が盛んに行われています。ふんは土地を肥やす肥料として大切にされており、毛沢東語録に「豚は小さな肥料工場である」とも記されています。


工業的性格

 先進諸国で行われている養豚は、多数の豚を狭い土地で集約的に管理して、効率的に食肉生産をしようとするもので、豚の工業的性格を発揮させたものといえます。


世界のおもな国での豚飼養頭数と豚肉生産量(2022年)

  飼養頭数(100万頭) 豚肉生産量(1000t)
世界 計 978.9 122,988
中国 452.5 55,414
米国 74.3 12,251
ブラジル 44.3 5,186
スペイン 34.0 5,066
ロシア 26.1 4,532
ベトナム 24.6 3,313
ドイツ 21.3 4,491
メキシコ 19.2 1,730
カナダ 14.1 2,257
フランス 12.1 2,152

資料:『国際農林水産統計』(農林水産省統計情報部、2022年3月発行)