時の家畜no.1
クローン牛誕生
 *日本の畜産におけるクローン技術の現状とこれから* 
イラスト 日本のクローン技術は、その基盤となる受精卵技術の水準が高いこともあり、諸外国と比べ技術的に一歩リードしています。
 発生初期の受精卵を使った核移値により牛クローンを生産する受精卵クローン技術の試みは、日本では1990年にはじめて産子生産の成功が報告されて以来、多くの機関がこの技術の開発実用化に着手し、現在では40を越す機関がこの技術の実用化に精力的に取り組んでいます。農林水産省の調べでは、現在までに370頭以上の子牛が生産されたことが明らかとなっています。
 しかし、そのうち生存しているクローンとしては6つ子が最高で、また生産産子の約半数は単子生産であることからもクローンの生産効率はまだ低く、効率的なクローン牛生産技術とするには、さらなる技術的な改善が必要です。
 一方、生産された子牛の発現形質に、レシピエント細胞に用いたミトコンドリアDNAが影響することも否定できないので、今後は、生産された産子について相似性調査を行ない、その育種学的な価値を明らかにする必要があることも指摘されています。
 現在、農林水産省が関係機関に呼びかけ、今まで生産された受精卵クローン(分割卵クローンを含む)の相似性に関する全国的な調査を開始したところです。
 体細胞クローンについては、ロスリン研究所の緬羊の成功が報告されて以来、日本においてもいくつかの研究機関が牛についての再現試験に取り組み、現在までに様々な体細胞を用いて70頭近い受胎が確認され、7頭の子牛の生産が報告されています(98年9月現在)。しかし、これまでの生産状況からは、体細胞クローンは分娩後の死亡事故が多いことも明らかになりました。
 利用する体細胞も皮膚細胞乳腺細胞卵管細胞卵丘細胞など様々な細胞が用いられ、これらの違いがクローン生産に及ぼす影響については今後の研究課題となっています。さらに、分化した細胞を用いたことによるクローン牛の生理活性への影響の有無や、ドナー細胞由来家畜との遣伝的能力に関する相似性調査についても今後詳細な調査が必要となっています。

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いずれにしても、受精卵クローン、体細胞クローンともに、畜産分野では、今までの繁殖技術を根本的に改革する利用価値の高い技術として位置づけられることから、イラスト多くの機関がこの技術の研究開発に取り組み、一日も早く、畜産の現場において実用的な技術として利用されることが期待されています。
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