飼育事例:太平寺幼稚園・ヒツジ

●5 動物飼育への理解に支えられ、育む“心”

 最後に北口先生に「ヒツジ飼育で、特に気をつける点はありますか?」とうかがってみたところ、「手をつけてみれば、何とかなるところはありますが……」としばし考えた後、以下の点を挙げてくれた。
ヒツジは複数頭で飼うこと:群れ動物なので、一頭だけだとさびしくて鳴き続けてしまう。
動物アレルギーのこと:心配される親御さんもいるので、最初はマスクをつけて子どもに触ってもらう場合も。でも今まで、ヒツジに触ってアレルギーが出た子はいなかった。
動物に馴れていない子に配慮すること:背の高さで優劣を判断するヒツジが、小さな子どもに頭突きをすることも。子どもたちとの接点は、ヒツジのようすをよく見るように。

 「飼うことで子どもたちの何を育てたいのか、教育的意図をはっきりとさせておく必要があると思っています。これが意識できていないと、子どもにとっても動物にとっても不幸な結果になる可能性もあります」とおっしゃる、北口先生。
 そうならないためには、「子どもたちの身近にいる私たち大人がまず、命を大切にし、愛情をもって動物に接しなくては。子どもが花をみて『きれい』と思うのは、初めからそうなのではなく、一緒に花を見たお母さんが『○○ちゃん、これがお花よ、きれいでしょ』と一緒に共感してくれるからなのです」という。
 しっかりした教育理念があるからこそ、動物をちゃんと飼うことができ、子どもたち(とその心)を育てることができるのだ。

 また、動物が身近にいる環境をつくることで、愛着をもって動物に接し、自分との関係を築くことができるのだという。物言えぬ動物と向き合うことで、子どもたちは体をとおして「生命の尊さ」「温かさ」「弱者をいたわる心」「相手の身になって考え、相手の喜びを自分の喜びにすること」など、色々なことを感じとってくれるという。

 動物を飼うには、日常の世話だけでなく、休日や病気の時のケアなど、大きな負担もともなう。でもそれを差し引いたとしても、子どもの心を育てる上で大きな利点があるのだ。
 ヒツジがいる園ではこれからも、のびのび育つ子どもたちの元気な声が、響いているにちがいない。


田んぼや畑に囲まれた豊かな環境にたたずむ、太平寺幼稚園

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