飼育事例:太平寺幼稚園・ヒツジ

 大阪・堺市にある太平寺幼稚園では、平成11年から2頭のヒツジを飼育している。都市化が進む地域にもかかわらず、周囲を田畑に囲まれたのびやかな環境のなか、園児たちはみな、ヒツジと暮らす生活を楽しんでいる。ゆったり・自然体で飼育を実践する園と、子どもたちのようすを取材した。

●1 「ヒツジ当番は好き?」「はーい!」

 「今日のお当番やりますよ」北口裕之先生(太平寺幼稚園理事長)が声をかけると、園児たちの表情がぱっと輝いた。当番の子が全員で、大きなクーラーボックスを協力して持ち、ヒツジの飼育舎に向かう。そのようすを見ていたほかの子たちからは「ヒツジ当番がんばってー!」と、大きな声援が送られる。

 クーラーボックスの中に入っていたのは、黄色い長靴。皆で履き替えてから飼育舎に入ると、北口先生からはさっそく「今日はこっちに4人、あっちに2人と、分かれてお掃除してください。フンは1カ所に集めてね」と声がかかる。
 ホウキを片手に、地面に落ちたフンを掃除する園児たち。するとそのすぐ脇でヒツジが、気持ちよさそうに目を細めながらフンをすると、気づいた園児が「あ、ウンチした、ウンチ!」と声をあげる。北口先生は慌てず「ほな、これも残さず掃除しような。自分かて部屋が汚かったら嫌やろ。それと同じなんよ」と声をかける。

 土の上をきれいに掃き終わったら、次はエサやり。おわん型に重ねた園児たちの手に、ひとつかみずつエサが渡される。ヒツジが勢いよく手から食べたところで、「次はナデナデしよな」と言われると、ためらいなく近づく園児たち。そんなようすを注意深く見守る北口先生からは、「最近のめりーちゃん(ヒツジの名前)は、触わられると嫌がるから、やめとこな」と状況に応じてさりげなく、声をかける。

 飼育舎から出てきた園児たちに「ヒツジ当番は好き?」と質問してみると、「はーい!」と皆、元気に手を挙げてくれた。最後は全員でしっかり手を洗っておしまい。それでもまだ、なんだか物足りなそうに教室に戻っていった。

 この“ヒツジ当番”は、年長児のみが担当している。園では、動物の飼育にあたって、
・年少(3から4歳):幼稚園の動物に馴れ、親しみをもってもらう
・年中(4から5歳):動物に愛着をもって接する
・年長(5から6歳):動物の気持ちになって考える
ことを目的としており、年齢によって動物とのかかわり方に段階をつけている。動物に馴れ、愛情をもてるようになってから初めて“飼う”ことになるので、「年長さんになれば、ヒツジ当番ができるんだ」と園児たちは、当番がまわってくる日を楽しみにしている。


長靴にはきかえて…

飼育舎をお掃除

エサをあげてから背中をなでなで

「ヒツジ当番好きな人は?」「はーい!」

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